日本統治時代の第四代台湾総督・児玉源太郎と台湾とのかかわりを詳しく描いた「台湾を目覚めさせた男 児玉源太郎」(梓書院)が出版され、7月21日に駐福岡台北経済文化弁事処(福岡台湾領事館)で著者の木村健一郎氏から陳忠正総領事に贈呈された。
木村健一郎氏は児玉源太郎の故郷山口県周南市で2期の市長、1期の県会議員を務める間に何度も台湾を訪問し、李登輝元総統から政治家としての心構えを聞くなど薫陶を受けた。その中で「第四代総督・児玉源太郎がいなかったら今の台湾はなかった。児玉が後藤新平を民政長官に登用するなどして様々な政策展開をしたことが今の発展に結びついている。児玉は台湾の恩人です」と元総統が言ってくれたことに大いに感激したという。
児玉源太郎は、1898年~1906年の8年間台湾総督を務めたが、その間陸軍大臣、内務大臣、文部大臣、満州軍総参謀長などを兼任したため、後藤新平や新渡戸稲造など錚々たる人材を起用して台湾の殖産興業、鉄道、道路、ダムや電気、上下水道などインフラの整備、教育・医療制度の充実などを推進させた。
筆者は「ともすれば台湾近代化の父として後藤新平の名が取り上げられることが多い中で、児玉と後藤が政策形成の打ち合わせを緊密に行ない、お互いの役割分担を確認し合いながら、『難治の土地』と呼ばれた台湾の近代化に向けていかに取り組んだかについて、皆さんに知ってもらいたい。児玉は大臣として入閣した後も、台湾のための予算獲得や政策実現に向けて尽力した。そして、児玉が深く台湾を愛していたことも、読者に感じて欲しい」と著書の中で述べている。
著書の贈呈を受けた陳忠正総領事は「台湾は日本から多くの恩恵を受けたが、その中でも教育と衛生は国の根幹をなすものである。百年を超える小学校が台湾に多く存在すること、台北帝国大学(現台湾大学)をはじめとする高等教育のための制度を整備したこと、医師を多く呼び寄せ伝染病や風土病への対策をさせたことなどは児玉源太郎の大きい功績だと思う。このような事実を、日本・台湾双方の若い人にぜひ知ってもらいたい」と応じ、著者の学校での講演や著作の寄贈を提案した。
最後に著者と、福岡台湾領事館、出版社などの関係者が今後の日台関係の友好発展を願って集合写真に納まった。